ORIENTATION ・ LECTURE

生成AI入門 座学編
失敗OK、まず触る3時間の前半

第1回の前半60分。本日の進め方を共有したあと、生成AIが何者で、どこで間違え、何を入れてはいけないのかを、公式の数字と実際に起きた事例で押さえます。

2026年7月14日(火)
14:00 - 17:00
対面・法研システムズ様
全社員 20〜25名
この座学で扱うこと
15min

Session 01 オリエンテーション講義

本日のゴール・進め方・クラス共有シート

45min

Session 02 生成AIの基本理解とリスク講義+デモ

検索との違い・ハルシネーション・情報漏洩・線引き・原則5つ

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この後 Session 03〜04 はハンズオン別資料

対話実践・業務棚卸し・AI活用マップ・実務デモ

SESSION 01 ・ 15min

ようこそ。本日3時間のゴール

生成AIに一度も触れたことがない方も対象です。難しいことは扱いません。本日のゴールは、自分の仕事でAIが使えたと言える小さな成功体験を1つ持ち帰ることです。「失敗しても大丈夫、まず触ってみる」を合言葉に進めます。

01 本日の前提

対象

全社員 20〜25名

職種・経験年数は問いません。前半は座学、後半は手を動かしていただきます。

使うもの

Gemini とスプレッドシート

業務PCのブラウザで Gemini と Google スプレッドシートだけを使います。開けない方は講師がフォローします。

ゴール

成功体験を1つ

自分の業務でAIを試し、明日も使ってみたいと思える手応えを1つ持ち帰っていただきます。

02 今日のお願い3点

事前準備

業務PCを起動し、ブラウザで gemini.google.com にアクセスして、ご自身の Google Workspace アカウントでログインできる状態にしておいてください。使えるかどうかは情シスご担当の判断によりますので、開けない方はその場で講師がフォローします。

03 全員参加を見える化するクラス共有シート

本日は受講者の皆さん全員で1枚のクラス共有シート(Google スプレッドシート)を使います。各演習の結果や気づきを、ご自身の名前の行に1行ずつ書き込んでいただきます。手を動かした分だけシートが埋まっていきます。

URL を受け取る
自分の名前の行を見つける
結果と進み具合を記入

進み具合は「やってみた/つまづき中/できた」の3つから選んで記入します。講師の指示があったら、当日配布される共有シートのURLを開いてください。

なぜ共有シートを使うのか

他の方の行が埋まっていく様子が見えると、自分も書いてみようという気持ちが自然に働きます。講師と運営はこのシートを見るだけで全員の進み具合を把握でき、つまずいている方にすぐ声をかけられます。正解を競うものではありません。空欄を自分の言葉で埋めること自体が、今日の参加です。

SOURCES
SESSION 02 ・ 45min

生成AIの基本理解とリスク

この章では、生成AIが何者で、何を得意とし、どこで間違えるのかを45分で押さえます。座学中心ですが、画面上で短いデモを挟みます。生成AIは確率的に次の言葉を選ぶ仕組みで、これが便利さと危うさの両方を生みます。

01 2026年、いまどこにいるのか

生成AIはこれから来る技術ではなく、すでに業務で使われている技術になりました。日本企業の業務利用率は55.2%、世界各国とは依然差があるものの、社内活用は加速しています。

87%
日本企業で生成AIを活用中+推進中と回答(前回調査76%→今回87%、約1年での上昇)
PwC『生成AIに関する実態調査 2026春』

すでに多くの会社が使い始めています。総務省の調査でも、日本企業の業務利用は55.2%まで伸びています。今日はその流れに、無理なく一歩踏み出す時間です。

使うのは Gemini(Gemini for Workspace、業務契約版)です。Google I/O 2026 で Gemini 3.5 Flash が発表されて標準モデルになり、上位モデルの 3.5 Pro も順次提供が進んでいます。文章の要約や作成、翻訳、表データの整理、画像の読み込みと説明まで、ブラウザ1つで扱えます。

伸びる技術と縮む技術

定型文の下書き、議事録の要約、長文の言い換えといった「ゼロから1を作る手前の作業」はAIが急速に肩代わりしています。一方で、事実が正しいかの最終判断、相手の状況をくんだ意思決定、責任を伴う承認は人間の仕事として残ります。AIに任せる部分と自分が担う部分を分けて考えると、使いどころが見えてきます。

02 生成AIと検索エンジンは別物

同じブラウザに文字を打つので混同しがちですが、両者は目的の質が違います。検索エンジンは正解の在りかを示すツールで、生成AIはあなたの状況に合わせて回答を組み立てる相手です。

観点検索エンジン(例:Google)生成AI(例:Gemini)
得意なこと事実・URL・公開情報を素早く引き当てる状況を整理し、文章・要約・案を組み立てる
1セッション平均滞在約5分約14分
使い方の前提キーワードを打って結果を選ぶ文脈を伝えて対話する
典型的な失敗検索結果が古い・偏るもっともらしい嘘を返す(後述)
ライブデモ:聞き方で答えが変わる

「来週の社内勉強会のアジェンダを1行で出して」と、「あなたは保険業界の研修担当です。来週、新人5名向けに60分でガイドラインの読み方を教えます。アジェンダを5ブロックに分け、各ブロックの所要分も付けてください」を、同じ Gemini に投げて回答品質の違いを画面でご覧いただきます。1回で終わらせず、3回4回と聞き返す前提が大切です。

03 リスク1:ハルシネーション(もっともらしい嘘)

生成AIは、それらしく続く言葉を組み立てているだけで、正しさを確かめてはいません。そのため、自信満々に存在しない事実を語ることがあります。いちばん身近なのは、社内の人名・数字・規程の条番号を、それらしく間違えるケースです。ぱっと見は正しそうなので、そのまま資料に載せると気づけません。だから、事実は自分で確かめる。これがいちばんの対策です。

2023年6月・米国ニューヨーク

弁護士が架空判例を裁判書面に引用

航空会社相手の訴訟で、原告弁護士が ChatGPT に判例検索させ、6件の存在しない判決を引用。原典を求められて発覚し、罰金5,000ドルと懲戒対象になりました(Mata v. Avianca)。

2024年2月・カナダ

チャットボットの嘘の案内で航空会社が敗訴

遺族割引の払い戻し可否について、サイト上のチャットボットが誤回答。BC州の民事解決トリビューナルはチャットボットも会社の表示として、812カナダドルの賠償を命じました。

2025年10月・豪州

政府納品レポートに架空引用が約20件

デロイト豪州が29万豪ドルで納品した福祉システム監査の報告に、存在しない論文や架空の裁判官引用が混入。研究者が発見し、契約最終支払分を返金する事態になりました。

だから、こうすれば安全

数字・固有名詞・法令条文・判例は、原典を確認してから文書にする。これだけ守れば、もっともらしい嘘に足をすくわれることはありません。事例のような大きな失敗は、この一手間で防げます。

04 リスク2:情報漏洩とシャドーAI

2つ目は、AIに入れた情報が外に出てしまうリスクです。身近なのは、便利だからと個人の無料AIに業務の文章を貼ってしまう場面です。その入力が学習に使われたり、端末から抜き取られたりすると、会社が知らないうちに情報が外へ出ます。会社が把握していないAI利用を、シャドーAIと呼びます。

2023年3〜4月・韓国 サムスン電子

解禁20日で3件の機密漏洩

半導体設備測定DBのソースコード、歩留まり管理プログラムのコード、社内会議の録音書き起こしが ChatGPT に送信された事案。同社は入力を制限したのち、5月に全面禁止へ進みました。

2025年2月・世界

生成AIの認証情報 約2,000万件が流出

AIサービス側が侵害されたのではなく、利用者側端末のマルウェアによる窃取と判明。AIそのものより、アクセスする端末側のセキュリティが弱点になることを示しました。

会社が把握していないAI利用は、日本国内でも一定の割合で起きています。

約5人に1人
生成AI業務利用者のうちシャドーAIに該当
エルテス調査 2026年1月 (n=300)
45.0%
社内AI規程がないと回答
同上 エルテス調査
56%
従業員が承認外AIツールを業務利用(世界)
IDC グローバル調査 2025年
だから、こうすれば安全

会社が認めた Gemini for Workspace を使い、個人の無料AIに業務データを貼らない。この2つで、シャドーAIと情報漏洩のほとんどは防げます。今日この場で使うのは、会社が用意した安全な環境です。

05 リスク3:やっていい・ダメの線引き

ダメなことが何かわからないので結局何もしない、という現場が一定数あります。判断基準を明確にすると、リスクを避けながら活用できます。

AIに入れない
  • お客様氏名・契約番号・健診結果などの個人情報
  • 社内の未公開資料、稟議書、人事情報
  • 取引先との非公開やり取り、見積金額
  • ID/パスワード/APIキー
入れて問題ない
  • 公開済みのプレスリリース・ニュース要約
  • 個人を特定できない形に加工した業務文章
  • 架空のダミーデータを使った業務シミュレーション
  • 一般的な業界用語の説明依頼
Gemini for Workspace の安心材料

本研修で扱う Gemini for Workspace(業務契約版)は、入力データがモデル学習に使われない設計です。プロンプト・応答・添付コンテンツは Google 側でも人間レビューされません。とはいえ、上記の入れない項目は契約の有無に関わらず社内ルールとして守る運用が現実的です。

06 データの取り扱い 3つの環境

Google の生成AIは、使っているアカウントの種類によって「入力した文章が学習に使われるか、人が中身を見ることがあるか」が変わります。会社アカウント(Google Workspace)は契約上、入力が学習に使われない設計です。それでも機密情報や個人情報は、念のため入れないのが日本の実務の主流です。迷ったら入れない、やむを得ないときだけ次のマスキングをする、と覚えてください。

データの種類無料版のGemini個人の有料プラン会社アカウント(Workspace)
入力が学習に使われるか初期設定では使われることがある(設定でオフ可)無料版と同じ(オフ可)契約上、使われない
機密情報(社外秘・契約・技術情報)原則入れない原則入れない学習されない設計でも原則入れない。必要時はマスキング
個人情報(氏名・連絡先・顧客データ)入れない入れない原則入れない。必要時は伏せ字で最小限だけ
要配慮個人情報(健康・医療・病歴など)入れない入れない原則NG。社内の承認手順と伏せ字化のうえ最小限
自分がどの環境か分からないとき

本日は、会社アカウント(法研の Google Workspace)または研修用に新しく発行された Google アカウントのどちらかを使います。ログイン中のメールアドレスの末尾が会社ドメインなら会社アカウント、そうでなければ個人・研修用アカウントです。判別できないときは講師に確認してください。個人・研修用アカウントの場合は、次のとおり学習オフの設定をしてから使います。

迷ったら入れない

個人向けプラン(無料・有料)は、初期設定のままだと会話が改善(学習)に使われることがあります。設定の「Geminiアプリアクティビティ」をオフにすると、以降は学習や人によるレビューに回りません。会社アカウントは契約で学習されない点が最大の違いです。ただしこの表は一般的な目安です。何を入力してよいかの最終判断は、必ず自社の情報取り扱いガイドラインに従ってください。

07 どうしても使うときは マスキング

マスキングとは、氏名や住所のように、そのままでは個人が特定できてしまう情報を、隠したり別の値に置き換えたりして「誰の情報か分からない」状態にする作業です。今回の研修では、有料の専用ツールではなく手作業で行います。中心に使うのは、実名や社名を仮の呼び名に置き換える「ダミー置換」です。

方法どうする
ダミー置換(今回はこれ)実名・社名を一律で仮の呼び名に置き換える田中花子→顧客A、○○商事→A社、△△物産→B社
列ごと削除CSVの個人情報の列を丸ごと消す(塗るより確実)氏名・電話・住所・メールの列を削除
一般化細かい値を大きなくくりに丸める37歳→30代、住所→都道府県だけ、7月3日→7月
仮名化 / 匿名化記号に置き換える。仮名化は対応表で元に戻せる、匿名化は戻せない田中花子→U001(対応表は別に厳重保管)
手作業のコツは3つ

同じ名前は必ず同じ仮名へ置き換えます(ゆらさない)。迷う列は塗るより消すほうが確実です。最後に、備考欄やフリーコメントに実名が紛れていないか、置換後のファイルを目視で見返します。まずは全員「原則そのままは入れない」から始め、必要なときだけ加工する、の順で身につけてください。

08 押さえる原則5つ

正しく使えば味方になる

リスクを並べましたが、入れないものを入れず、出力を自分で確かめる。この2つを守れば、生成AIは日々の作業を確実に軽くしてくれます。この後のハンズオンで、実際にその手応えを作っていきましょう。

SOURCES
SESSION 補足

後半で扱う便利機能(デモ)

ここからは、Gemini や Google Workspace の少し進んだ機能です。研修の後半(2:30〜2:45)に、講師の画面でデモとしてご紹介します。無料版や会社の契約プランによっては使えない・上限が違うことがあるため、まずは見て雰囲気をつかんでいただく位置づけです。手元で試せる方は一緒にどうぞ。うまく動かなくても問題ありません。

01 Geminiの便利機能 4つ

機能できることどこから使いどころ・注意
ファイルのアップロード手元のPDF・Word・画像を渡して読ませる入力欄の「+(ファイルを追加)」→アップロード議事録や報告書の要約・質問。会社アカウントは管理者の許可が要る場合あり
ドライブから追加Googleドライブの資料をダウンロードせず読ませる「+」→ドライブから追加(初回は連携を許可)共有ドライブの企画書をその場で参照
画像生成文章の指示から画像を作る(今回は紹介のみ)ツール→画像を作成資料の挿絵・イメージ図の下案。無料版や一部プランでは使えないことがある
Gemよく使う指示・役割を保存して呼び出すWeb版の「Gemを探す」→新しいGem毎回同じ前置きを打たずに任せる。会社の一部プランでは使えないことがある
Gemはプロンプトの次の段階

Gemは、よく使う指示(役割・守ってほしいルール・出力の形式)をあらかじめ保存し、呼び出すだけで同じ設定のGeminiと話せる機能です。毎回長い前置きを書き直す手間が省け、用途別に自分専用のGeminiを何個も用意できます。作成・編集はGeminiのWeb版で行います。

02 NotebookLM 自分の資料だけで答えるAI

NotebookLMは、自分が渡した資料だけを読み込んで、その中身に基づいて答えたり要約したりしてくれるGoogleのツールです。ネット全体から探すのではなく、アップロードしたPDF・Webページ・Googleドキュメントの範囲で答えるので、社内マニュアルや分厚い契約書のように「この資料の中身を正確に知りたい」場面に向いています。渡した情報を根拠に答えを組み立てるこの方式は、RAG(検索して見つけた情報をもとに回答を作る方式)と呼ばれます。1つのノートに入れられる資料は、無料版で50件までです。

プチハンズオン(手元で試せる方は一緒に)

1. notebooklm.google を開いて新しいノートを作る。2. 手元のPDFを1つ、または興味のあるWebページのURLを1件追加する。3.「この資料を3行で要約して」と質問する。4. 続けて「◯◯について書かれている箇所は?」と聞き、引用元番号で該当箇所を確かめる。5. 余裕があれば音声解説を生成して、資料が会話形式で読み上げられる様子を体験する。

SOURCES